一歩の写真散歩

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カテゴリ:books( 6 )


2015年 01月 27日

土漠の花

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著者:月村了衛
出版:幻冬舎


初めて読む作家でしたが、帯の ”自衛隊は何を守るために戦うのか? ”
自衛官は人を殺せるのか? という強烈な問いと著名人の書評に
つられて買ってしまいました。


中東での人質事件が起こる前に手にしたのですが、いささか不謹慎な
言い方をすれば
ある意味タイムリーな小説を期せずして読むことに。


否定的ではなく自衛隊の海外での活動が今後さらに増えるとこの小説
の様な事態が今後起こり得る、そんなことを想起させられました。
と同時に派遣することへの国家、国民の覚悟も問われている様にも。


物語は現実に現在でも続けられているソマリアでの海賊対処行動に従事中
の陸自の小隊が墜落ヘリ捜索救助活動中に氏族間の争いを逃れてきた女性
を救助するところから始まります。


現行法制下では邦人の救助さえままならない中での外国人の保護救出。
おそらく上層部としては起きて欲しくない事態であったことでしょう。


小説は現場目線で描かれており解決するまで上層部は出てきません。
士官の指揮官と通信手段を失なった中、生き残った者の中から新たな
指揮官を決めて必死の行動が始まります。

意図せずして部族間の争いに巻き込まれ、追手との壮絶な戦いを余儀なく
される隊員達。
そんな中で明らかになる過去の隊員間の確執、何の為に
誰の為に戦っているのかという自問自答。そして守るべきものを守る為の
自己犠牲。書の帯にある号泣小説かはともかく、こみ上げてくるシーン
が何度もありました。


小説を離れて考えるに、中東問題は歴史的な部族間の争いに石油が絡み
宗教、価値観を異にする欧米社会が介入する様になって増々混迷の度を
増し今日に至っている様に思えてなりません。
できるならば関与を避けたいところですが資源に乏しい我が国の存続に
とって中東の安定が欠かせない以上そうもいきません。
もっと前向きにとらえるならば宗教的にも民族、人種的にもどちらにも
組みしない我が国だからこそできることがあるとも言え、これまでも
国と民間の地道な支援で信頼を得て友好な関係を築いてきました。


現実に派遣される彼らにも当然のことながら家族があります。
命を賭して任地に向かう彼らには国民の理解と支持、尊敬をもって報い
たいものです。そして可能な限り身を守る物的、法的整備をもって彼らに
応えねばなりません。


戦後70年の節目となる今年、今国会で議論となろう集団的自衛権と安全保障
関連法の整備
の行方に注目したいと思います。


最後に著者には申し訳ないですが、ミリタリーマニアでない者にとっては戦闘
シーンの描写が長く
知らない軍事用語が多用されているところがちょっと
辛かったですね。でも戦闘のリアリティがこの小説で描きたかった核心部分を
浮かび上がらせるのに必要だったのだろうと解釈しました。
興味を持たれましたら一読下さい。




by ippoippoiku | 2015-01-27 10:24 | books | Comments(0)
2014年 04月 05日

永遠のゼロ

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遅ればせながら百田尚樹さんの話題のこの本を読み終わりました。

買物の休憩で立ち寄るコーヒーショップで少しずつ読み進めたので時間を要したのですが

何度もこみ上げてくるものを抑えながらようやく読み終えました。


特攻隊員だった祖父のことを知りたくて元隊員を訪ね歩き60年の時を経て孫が知る

秘められた真実。

映画化もされ270万部を超えるベストセラーだそうですが、単行本が出たのは2006年とか。


巻末の解説は亡くなられた俳優で読書家としても知られた児玉清さんが書かれています。

この本の秀逸さを表している部分を『』で引用します。


『太平洋戦争とはどんな戦争で、どのような経過を辿ったのか。また、この戦争に巻き

込まれた我々日本人は、軍人は、国民は、その間どの様に戦いどの様に生きたのか。

国を護る為に戦わなくてはならなくなった若者達たちの心とは、命とは。

彼ら若者達を戦場に送り出したエリート将校たちの心とは、といったことを作者はものの

見事にわかりやすく物語の中にちりばめている...』


米国の工業力と大きな隔たりがあった時代にゼロ戦という優秀な戦闘機を生み出しながら

戦争の長期化と共に劣勢となっていった理由とは。真珠湾以降、人命を尊重する思想で設計

された戦闘機をはじめとする圧倒的な工業力と物量で反転攻勢する米国の底力。

私も本書は小説の形をとっていますが現代への示唆に富んだ歴史書でもあると思いました。


読んでいて数年前に訪れた鹿児島知覧の特攻平和会館のことを思い出しました。

特攻機と共にたくさんの辞世の句や家族への手紙が展示してあり胸が一杯になりました。

しかしこの本を読んで、これらの句や手紙の行間にこそ本当の思いが込められていた

ことを知らされました。


敗戦により時の権力に阿る変節したマスコミに扇動された一般国民からも戦陣に散った方

生き残った方、その家族までも罪人に貶められました。

罪深い一部のマスコミは今日でも意図的か浅はかなのかは別として特攻は狂信的な殉教

でありテロリストと同一視する向きも有る様です。

これは、9.11ニューヨーク貿易センタービルに代表される様な民間人を巻き込むテロ行為と

国、言いかえれば家族を守る為に命を賭して対空砲火を浴びながら艦船に体当たりしていった

行為を同一視するという愚かで許し難い見方です。


どの世代もそれなりに時代に翻弄された苦労があります。

団塊の世代、バブル世代、バブルがはじけた世代、そして大きな災害を被った世代。

しかし、先の戦争でこの世を自ら去らなければならなかった世代のことは今を生きる

者として決して忘れてはならないと心から思います。


戦争を体験した世代の人達はあまり語りたがりません。それは辛い記憶であることも

さることながら到底理解して貰えないという気持ちがある様に伺えます。


そういった意味からも一読に値する本だと思います。特にこれからこの国を担う若い

世代の人達に読んで欲しいです。

本を読んだ時の気持ちをもう一度、映画館でたくさんの人達と共有したくなりました。


by ippoippoiku | 2014-04-05 14:59 | books | Comments(2)
2008年 09月 07日

リヴィエラを撃て

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-出版:新潮社-


歳をとると言う表現は悪戯に時を費やしてきたような響きがあり好きではない。

『君も歳をとったなあ』とか言われる時はあまりいい場面ではないことが多い。

歳を重ねるとしたいところだが最近、まさに歳をとったと感じたことがあった。


高村薫さんの長編推理小説『リヴィエラを撃て』を再読した。

平成4年に刊行され平成9年に文庫化されたものを読んだので10年以上前に

読んだことになる。

だがしかし・・・殆ど忘れていて二度楽しめた。^^;


まったく忘れてしまうほど印象の残らない作品かと言えば決してそんなことはない。

この作品は本当に日本人作家の作品なのかと唸らせられるほどに国際政治の裏側を

舞台とした第一級のエスピオナージである。

アイルランド・ロンドン・東京を舞台に中国の近代化と香港返還に端を発する

国際政治の影に翻弄される悲しい宿命を負った登場人物達が著者特有の細かな描写で

綴られ、読み応えのある作品で一気に読んでしまった。

なのに何故殆ど忘れてしまったのか。10年の歳月のせいか、脳が記憶に留めるに

及ばずと判断したせいか、やはり歳を取ったせいか・・・。

いずれにしても当面、新たに本は買わなくて済みそうである。

嬉しい様な悲しい様な・・・。^^;


by ippoippoiku | 2008-09-07 15:25 | books | Comments(0)
2008年 08月 05日

クライマーズ・ハイ

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-出版:文藝春秋-

ランナーズ・ハイと並び時折り耳にする言葉である。興奮状態が極限まで達して麻痺し恐怖や肉体の疲労を一切感じなくなる状態を言うらしい。 

1985年夏、520名の犠牲者を出した史上最大の航空機事故は国内で起こったこともあり当時のニュース映像と御巣鷹山の名と共に鮮烈に

記憶している。

特に奇跡的に助かった4名、中でも少女が自衛隊員に抱えられてヘリコプターで吊り上げられて行くシーンは奇跡的な生存の感動と生死を

分けたものへの畏敬の念からか知らずと涙がこみあげてきたのを記憶している。恐らく忘れることはないであろう。

本書はこの未曾有の事故報道の裏側を舞台とした横山秀夫氏の渾身の作品である。


著者自身が事故当時、墜落現場となった群馬県内のとある新聞社の記者であったことが書く動機であろうがそれ故にリアリティのある秀作に

仕上っている。

事故の全権デスクを任された主人公を中心に記者が必死で取材した記事が紙面に載るまであるいは握りつぶされる過程がリアルに描かれて

おり興味深い。

地元大物政治家の存在・社内派閥・保身・妬み・記者としての使命感と挫折、それに登場人物達に秘められた過去も交錯し事故後17年経過

した日々と重層的に展開して行く。


新聞に限らず偏向報道が目に余る昨今、報道に携わる者は今一度誰の為の報道か、その原点に立ち返って貰いたいと強く感じた一冊

であった。発信する側もそれを受ける側も一読に値すると秀作である。

折りしも事故のあった時節でもあり、この夏一押しの一冊である。タイトルのネーミングの意味は・・・止めておきましょう。^^


by ippoippoiku | 2008-08-05 10:00 | books | Comments(0)
2007年 10月 01日

シェエラザード

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-出版:講談社-

-客船ファンの方にもお薦めです-

気持ちにゆとりがないと長編小説にはなかなか手がでないものである。

久さ方ぶりに手にしたのが浅田次郎さんのこの本。

世の中がどんなに変わろうとも”忘れてはならないことがある”

そんなメッセージが込められている様に思われた。

実際にあった悲惨な事件を下敷きに推理小説という形で私達にそんな

ことを想起させてくれる秀作である。


下敷きになった事件とは、第二次大戦末期に連合国の要請で捕虜や

民間人の救援物資の輸送に当たっていた民間からの徴用船”阿波丸”が

台湾海峡で2044名(大半が民間人で生存者は僅かに1名)と共に撃沈された事件である。

誤爆ということになっているが真相は闇の中である。

タイタニックよりも多くの犠牲者の出た史上最大の海難事故?にも関わらず

戦時中だった為か、はたまた何か見えない力が働いたせいかその後語られる

こともなく闇に葬られたミステリアスな出来事であった。


史実の羅列の狭間に埋もれていった人々を描くことで戦争がリアリティを持って

理解できる様に思う。歴史に学ぶとは史実の暗記ではなくまさにこういう本を読む

ことではなかろうかとさえ思えた。


我が国の未来を大きく決定づけたあの戦争は未だ清算されていない。

読み終わった今、繁栄の中に生きる私達は忘れてはならないことを余りにも

忘れ去り、あるいは正しく知らされずにきたが故に対外的にも国内的にも今日の

身動きがとれない閉塞事態に陥ったのではなかろうかと思えてならない。


タイトルの”シェエラザード”はご存知の方も多いと思うがアラビアン・ナイト

の千夜一夜物語に出てくる賢い王妃の名前である。

リムスキー・コルサコフの交響曲としても知られている様ですね。

この曲がどうしてタイトルとなったかはここでは明かさないことにしましょう。^^

船を引き上げようとする現在と当時を交互に重層的に描くことで未だ厳然と横たわる

未解決の問題を突きつけながらミステリーとロマンスの要素も盛り込み読者を

飽きさせない秀作である。

興味を覚えた方は是非御一読下さい。


by ippoippoiku | 2007-10-01 23:52 | books | Comments(0)
2007年 08月 25日

お散歩写真のススメ

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-出版:枻出版社-

何事もその楽しみ方は人それぞれですが、写真の楽しみ方で自分と近いなと思える本を見つけました。

人間中心のドキュメンタリーや雑誌のレポート撮影を主に活動されているフリーカメラマンの原 康(はら やすし)さんのこの本です。

原さんの使うカメラは、フィルムのコンパクトカメラです。だからこそとても味わいがあり、なんだかほっとする写真です。

文庫本ですがモノクロとカラーを折り混ぜた写真が中心でプチ写真集と言った方がいいかも知れません。

肩肘の張らないおすすめの一冊です。


by ippoippoiku | 2007-08-25 08:45 | books | Comments(0)