一歩の写真散歩

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2007年 10月 25日

新幹線にみる技術の進歩に思う

久さしぶりの出張。
夕刻に新横浜を定刻通り発車した、のぞみの車内はいつもながらに混んでいた。

席に着くなり携帯が鳴る。リラックスしてお楽しみ中の通路側の人に二度も身をよじって貰うのもためらわれ
”移動中”とメールで返信し急用かの確認をとる。
明日でも事足りるとの返信を確認して缶ビールのプルトップリングをプシュッと引いた。


e0152866_905829.jpg 移動だけで済む日の一人出張の車内はちょっとしたお楽しみタイムである。
缶ビールを片手にピーナッツを口に放り込みながら読みかけの本を読むも良し
好きな音楽を聞いてリラックスするも良し、はたまた睡眠不足を補う為、ひたすら
寝るも良しである。
もっともそれは仕事の準備が万端整っている場合に限られる。
斜め前の御仁は先程までPCで盛んに仕事していたが一区切りついたのか寝入って
しまった様だ。いや頭の中はまだ仕事モードで目を閉じているだけかも知れない。

かつて超多忙だった頃、客先に当日提出しなけらばならない書類を車内で仕上げ
データを支社に飛ばしてプリントして貰いどうにか間に合わせたことがあった。
その時、疾走する新幹線の自分を追い越して宙を飛んで行くデータが見えた様な気がした。
この時、追い越していったのはデータではなく時代だったのかも知れない。
ふとそんな気がしたものだ。しかし今はそんなことはもう当たり前の時代の中にいる。



e0152866_912967.jpg 今回の出張は建設現場の調査のみだったので、客先との会議もなく翌日の夕刻には
帰りの新幹線ホームに立つことができた。
折りしもホームに入ってきた車両は今年7月に投入されたばかりの最新型のN700系のぞみ。

東京-大阪間を5分短縮したのは10年をかけて開発した車体を自ら1度だけ傾ける技術。
時速270km/hのままでカーブを駆け抜ける。
この1度という僅かな角度は走行性能と乗客の快適性から導き出されたものらしい。
5分の差が日本経済にいか程の影響を及ぼすかなんてことはさて置き、少なくとも
腰痛持ちにとっては5分でも早く目的地に着くことは有り難い。^^




e0152866_915484.jpg加速も従来型よりスムーズで従来型が300秒要していた最高速度までを180秒で一気に駆け上がる。
シートも改善された様で心なしか乗り心地も快適だ。
普通車でも窓側席にはコンセントがありPCや携帯の充電に便利そうだ。ネット接続も数年内に
できるようになるらしい。

省エネも初代新幹線から50km/hスピードアップしているにも関わらず32%改善され、仮に開業当初の
速度で走行したとすれば実に49%、およそ半分の電力消費で済んでいるそうだ。

デッキも静かで電話も大きな声を出す必要はなさそうだ。多目的室・多機能トイレなど大きく改善され
デザインも洗練されている。

JRの廻し者の様につらつらと書いてしまったが長年、技術の世界に生きていると余ほどの天才でも
現れて革命的な発明でもしない限り技術とは地道な改良の積み重ねであることを身にしみて知っている。

e0152866_922445.jpgこのN700系も1964年の東京オリンピック開催に合わせて開業して以来40数年間の運用で
得た経験による弛みない改良の集大成であろう。


革新的なものはそんな小さな改良の余地がないというところまで達した時にブレークスルー
して生まれるものではなかろうかと思う。

いずれにせよ新幹線は我が国の誇る技術の中でも超一級のものであることは間違いない。
戦後、航空機開発を許されなかった時代に悔しい思いをし世界最高水準の高速鉄道の開発
に心血を注いできた技術者達の思い・技の伝承の結実であろう。


新型新幹線の心地良い加速を背中に感じながら技術屋の端くれとしてそんなことを取り止めも無く思った久しぶりの出張であった。


by ippoippoiku | 2007-10-25 09:10 | opinion | Comments(0)
2007年 10月 01日

シェエラザード

e0152866_23582922.jpg

-出版:講談社-

-客船ファンの方にもお薦めです-

気持ちにゆとりがないと長編小説にはなかなか手がでないものである。

久さ方ぶりに手にしたのが浅田次郎さんのこの本。

世の中がどんなに変わろうとも”忘れてはならないことがある”

そんなメッセージが込められている様に思われた。

実際にあった悲惨な事件を下敷きに推理小説という形で私達にそんな

ことを想起させてくれる秀作である。


下敷きになった事件とは、第二次大戦末期に連合国の要請で捕虜や

民間人の救援物資の輸送に当たっていた民間からの徴用船”阿波丸”が

台湾海峡で2044名(大半が民間人で生存者は僅かに1名)と共に撃沈された事件である。

誤爆ということになっているが真相は闇の中である。

タイタニックよりも多くの犠牲者の出た史上最大の海難事故?にも関わらず

戦時中だった為か、はたまた何か見えない力が働いたせいかその後語られる

こともなく闇に葬られたミステリアスな出来事であった。


史実の羅列の狭間に埋もれていった人々を描くことで戦争がリアリティを持って

理解できる様に思う。歴史に学ぶとは史実の暗記ではなくまさにこういう本を読む

ことではなかろうかとさえ思えた。


我が国の未来を大きく決定づけたあの戦争は未だ清算されていない。

読み終わった今、繁栄の中に生きる私達は忘れてはならないことを余りにも

忘れ去り、あるいは正しく知らされずにきたが故に対外的にも国内的にも今日の

身動きがとれない閉塞事態に陥ったのではなかろうかと思えてならない。


タイトルの”シェエラザード”はご存知の方も多いと思うがアラビアン・ナイト

の千夜一夜物語に出てくる賢い王妃の名前である。

リムスキー・コルサコフの交響曲としても知られている様ですね。

この曲がどうしてタイトルとなったかはここでは明かさないことにしましょう。^^

船を引き上げようとする現在と当時を交互に重層的に描くことで未だ厳然と横たわる

未解決の問題を突きつけながらミステリーとロマンスの要素も盛り込み読者を

飽きさせない秀作である。

興味を覚えた方は是非御一読下さい。


by ippoippoiku | 2007-10-01 23:52 | books | Comments(0)